陶彩画とは
陶彩画とは有田焼の上絵の技法を用いながらも、
まったく新しい発想でもって描く絵画です。
私はそれを草場一壽さんのもとで学びました。
水彩や油彩、他の絵画技法と比べて、
陶というのはとても長い年月その美しさを留めます。
ただその製法の複雑さや、あるいは陶とは
実用品・工芸品であるとの思考の枠組みからか、
陶の絵画技法としての側面は、
日本ではあまり発達してきませんでした。
陶彩画、という新しい名前が示すのは
釉薬の溶け合う景色をそのまま絵に活かし、
芸術へと昇華するマインドだと私は思います。
矢山昭子
釉薬が混じり重なって生まれる色彩 盛られた釉薬の立体感 陶器ならではの艶
陶彩画は、従来の絵画技法にはない多くの特長と可能性を秘めた新しい表現です。
ただ、高度な絵付けの知識と技術はもちろん設備投資、焼成を重ねることによる様々な
リスクなど、決して簡単な技法ではありません。
しかしそうして完成する、高温で焼成した陶そのものの画面は、
紫外線にも湿気にも、絵画としては破格の耐性を有します。
油絵さえ100年経つうちには劣化を免れない絵画の世界において、
半永久的にその色彩を失わない陶彩画はどれほどの可能性を秘めているのでしょうか。
技法が生まれて20年、作家はようやく2人目。
陶彩画は、まだ歩きだしたばかりです。
矢山昭子
かぎ猫とは
猫の曲がった尾のことを かぎしっぽ と呼びます。
そういうしっぽは幸運をひっかけてくる鉤(hook)であり
また宝の蔵の錠をひらく鍵(key)のしっぽであるなど、
とても縁起のよいものとして親しまれています。
かぎしっぽの猫で、かぎ猫。
陶彩画でつくる猫たちには願いを込めて
そう名付けました。
心を和ませ、運をひらく猫となりますように。
1、厚さ4mmほどの陶板一面に色をつけます。作品にできるほど豊かな色彩と表情が現れる陶板は、決して多くありません。
2、細く長い筆に、伸びの良くない油性の絵の具をつけて猫のアウトラインを引きます。
3、筆で絵の具を盛りながら絵付けします。猫の立体感にあわせてのせる絵の具の量を加減します。
4、窯で一晩かけて焼成、白かった絵の具はつやのある透明になり、しっかり焼きついています。
5、猫の毛並みを一筆々々絵付けします。これも猫の立体にあわせて強弱をつけ、そしてまた窯へ。
6、ひげなど5回目ではできなかった部分や、目に絵の具をのせて、また窯へ。
7、目の複雑な色合いは大切な部分なので、納得がいくまで絵付けと焼成を繰り返します。この絵では4回になりました。
8、猫の体にはきらきら光る雲母を使います。溶けて変質しやすい絵の具なので、ここは一発勝負です。
9、仕上げの絵付けをして完成。炎に鍛えられた、永遠に色褪せることのない絵画の誕生です。
工程を紹介したブログの記事
工程1,2 http://kagineko.sagafan.jp/e467932.html
工程3 http://kagineko.sagafan.jp/e469630.html
工程4 http://kagineko.sagafan.jp/e480183.html
工程5 http://kagineko.sagafan.jp/e484438.html
工程6 http://kagineko.sagafan.jp/e489519.html
工程7 http://kagineko.sagafan.jp/e493414.html